【 2005/12 】

フレンチパラドックス、チーズに含まれる抗老化物質ポリアミンが関与

ワインやビールの適度の飲酒は長寿や健康作りに役立つという研究がこれ までに幾つか報告されている。とくに、ワインにはポリフェノール類などの抗酸化物質が 多く含まれ、心臓病予防やアンチエイジング(抗老化)に有用であることがいわれてきた。

高齢化社会の到来により、加齢による疾病リスクが懸念されるが、高齢者の飲用に適した飲み物として 今後もワインの需要が高まることが予測される。

ワインの健康効果については、ある疫学調査の報告に基づいている。 それによると、フランス人はイギリス人やドイツ人と同程度の動物性脂肪を摂っているにもかかわらず、動脈硬化による心筋梗塞などの疾患が 少ないことが判明した。

これを、フレンチパラドックス(フランスの逆説)と呼び、その原因がフランス人の愛飲するワインに あると着目され、医学雑誌「The Lancet」などでも取り上げられた。それ以後、ワインに含まれる抗酸化物質が動脈硬化防止やアンチエイジングに関与しているといわれてきた。

これについて、先頃、JAFRAでインタビューした自治医科大学大宮医療センター(総合医学2 外科)の早田 邦康 氏によると、 フレンチパラドックスは、ワインよりむしろワインとともに食しているチーズによりもたらされたもの、と指摘する。事実、フランス人はチーズについても、イギリス人の2倍、ドイツ人の1.5倍程多く食べているという。

実は、抗酸化作用ということでみれば、ワインよりコーヒーのほうが3−4倍も強い。つまり、アンチエイジングについては、ワインの抗酸化作用というより、チーズに多く含まれるポリアミンという物質が深く関与しているという。

ポリアミンは大豆やキノコ類、とくに発酵食品に多く含まれる。高ポリアミン食である納豆や味噌などの大豆製品を多く摂る日本人は世界でもトップの長寿を誇る。

赤ワインに含まれるレスベラトロール、アルツハイマー疾患の進行予防に有用

では、ワインに抗老化は期待できないのか----。
赤ワインが老化を遅らせるという報告もある。以前、ハーバード大学の研究グループが、 赤ワイン等に含まれるポリフェノールの一種であるレスベラトロール(ブドウを カビから防ぐ)は細胞の寿命を70%増大させると発表している。

実験室の研究で、レスベラトロールがDNAの安定性を高め、老化を遅らせる酵素を活性化させていることが判ったという。

また、ワインが高齢者に適した飲料であるという点についてはどうか。最近の報告で、赤ワインのレスベラトロールがアルツハイマー疾患の進行予防に役立つということがいわれている。The Journal of Biological Chemistry 誌に掲載された記事によると、Litwin-Zucker Research Center for the Study of Alzheimer's Disease and Memory Disordersの研究者グループが、レスベラトロールは、アルツ ハイマー病患者の脳内に見られるβアミロイド蛋白の生成を抑制しないが、分解 を促すことが判明、さらに他の抗酸化物質と比べ、そうした作用が強いことが判ったと報告している。

βアミロイド蛋白というのはタンパク質のカスのかたまりで、脳内に沈着し、神経細胞を殺す毒性があるといわれている。現在、アルツハイマー症の原因として、「βアミロイド蛋白説」が最も有力視されている。

ワインのアルツハイマー疾患予防に関する研究については、他にもある。 ニューヨークの研究グループによるもので、1991〜1996年、マンハッタン在住 の高齢者980人のデータを分析したところ。4年間の追跡研究期間で、260人が痴呆症 を発症、うち199例がアルツハイマー疾患で、61例は卒中原因の痴呆症だった。 調査の結果、ワインを全く飲まないグループに比べ、1日3杯飲んだグループは アルツハイマー疾患の危険性が45%減少していることが分かったと報告している。


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