【 2008/4 】

飲酒や乳製品、大腸がんや前立腺がんのリスク高める

4月29日付けの朝日新聞で、同量の飲酒でも、日本人は欧米人に比べて大腸がんのリスクが高くなることが厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎)の研究で判明したと報じている。

研究では、全国各地の5件の疫学調査を分析。調査は男女20万9千8百人(うち2802人が大腸がんと診断)を対象に、最長で14年間追跡している。分析により、男女とも1日の平均摂取量がアルコールで23グラム以上になるとリスクが高まることが判明したという。

ちなみに、男性の場合、欧米人はアルコール45グラム(日本酒で2合相当)あたりでリスクが上昇するが、日本人だと45グラム飲んだ場合、飲まない人の2倍以上のリスクになることが判ったという。また、痩せた男性はリスクが高くなることも判ったという。

大腸がんは、近年日本人の間で増加している。これまで「食物繊維の摂取量の減少」や「植物性脂質の摂取量の増加」が主な原因として挙げられていたが、今回の報告で、「アルコールの摂取量の増加」も要因であることが指摘された。

飲酒については、適度であれば健康に有益であることがこれまでに報告されている。国立がんセンターが、1990-1996年に、岩手、秋田、長野、沖縄の4県の40-59歳の男性約2万人を対象にした調査では、日本酒を飲んでも1日に1合(180ml)以下の場合は全く飲まない人に比べ、死亡率が低いことが明らかになったと報告している。

適度な飲酒の心臓病や糖尿病のリスク低下も報告されている。ハーバード大学による内科医健康調査では、21,537人の健康な男性の飲酒の程度を約12年間調べ、1週間に2〜6杯飲酒する場合、全く飲酒しないか1日2杯以上の場合と比べ心臓病での急死のリスクが低いことが判ったと報告している。また、University of Wisconsin-Madison研究グループが12年間にわたって行った研究(II型糖尿病患者983人を対象)では、糖尿病患者が毎日1〜2杯の飲酒をした場合、心臓病による死亡率が80%低下することが判ったという。

ところで、厚生労働省研究班は4月半ばにも、牛乳やヨーグルトなど乳製品の摂り過ぎが前立腺がんのリスクを高めることを報告している。
1995年と1998年に、日本の10府県に住む45〜74歳の男性約4万3千人を対象に、乳製品、牛乳、チーズ、ヨーグルトの摂取量で4グループに分けたところ、乳製品、牛乳、ヨーグルトの摂取量が最も多いグループは最も少ないグループに比べ、前立腺がんの発症リスクが、それぞれ約1.5倍となり、摂取量が多いほどリスクが高いことが明らかになったという。


今回、日本の研究で乳製品と前立腺がんリスクの関係が明らかになったが、すでに欧米では10年ほど前から同様の報告がある。また、アメリカでは数年前から、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸が心臓の健康を損ねるとし、米国ニューヨーク市保健委員会が、市内の飲食店にを1食あたり0.5g未満にするよう、罰則規定を定めている。トランス脂肪は、「悪玉コレステロール」といわれる低密度リポタンパク(LDL)を増加させ、「善玉コレステロール」の高密度リポタンパク(HDL)を減少させる。

最近の報告でも、American Journal of Epidemiology誌4月号によると、University of Paris-SouthのFrench national scientific research center研究者グループが1995〜1998年に食習慣および生活習慣調査に応じた女性25,000人からデータを集め経過観察を行った(この間、363人が乳がんと診断)ところ、トランス脂肪値が最も高いグループは最も低いグループに比べ、乳がんリスクが2倍になることが分かったという。また、オメガ3脂肪酸については、影響は見られなかったという。


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