【 2009/3 】

認知症や鬱症対策、期待されるオメガ3系脂肪酸の有用性

今後、高齢者人口の増加で認知症対策が急がれるが、65歳未満で発症する認知症、いわゆる「若年性認知症」の問題もここにきて急浮上している。 3月21日付けの朝日新聞によると、厚生労働省研究班が調査したところ、40代後半では10万人に27人の割合で「若年性認知症」と推計されたという。

調査では2006-2008年に茨城、群馬、富山、愛媛、熊本の5県の病院などで認知症患者の実態を調べた。 加齢に伴い、認知症の発症人口も増えるが、50代前半では10万人に51.7人、60代前半では10万人に189.3人の割合という。

加齢とともに、脳機能は低下へと向かう。また最近では将来や経済への不安から鬱傾向になるなど心身症の増加も懸念される。こうした疾患に有用とされているが、イワシやサバなど青魚に多く含まれるDHAやEPAといったオメガ3系脂肪酸である。

アルツハイマー症など認知症の要因としてアミロイドβ蛋白質の脳への凝集が有力視されているが、オメガ3系脂肪酸がアルツハイマー症の予防に有用であることが報告されている。
Journal of Neuroscience誌07/4月号によると、University of Californiaアーバイン校研究者グループが、アルツハイマー症を誘発させたマウスに、オメガ3系脂肪酸を添加したエサを与えたところ、アミロイドβ蛋白質の脳への凝集が低下することが分かったという。

鬱については、フィンランドの研究者グループが、フィンランドの4地域に住む3千204人を、魚を1週間に1回、あるいはまったく食べないグループを「あまり食べない」に分類(全体の30%)したところ、全体の28%が中度あるいは重度の鬱症状を示していることが分かったという(00/5,American Psychiatric Association会合)。

また、躁鬱病患者30人に1日10gの魚油を4ヶ月間与えたところ、64%に回復が見られたという報告もある。さらに、分娩後の女性の鬱病はオメガ3系脂肪酸の欠乏が原因との指摘もある(Archives of General Psychiatry誌'99/5月号)。

最近の報告では、オメガ3脂肪酸は早産女児の脳発達促進に有用であるという。Journal of the American Medical Association誌09/1月号に掲載された記事によると、Women's and Children's Hospital研究者グループらが、妊娠期間33週前に生まれた乳児657人に、オメガ3脂肪酸のDHAの多量摂取(総脂肪酸の約1%)、または標準摂取(約0.3%)のどちらかを与えた。投与方法は母乳(高摂取群の母親に1日500mgのカプセルを投与)かミルクによるもの。

Bayley精神発達指標(MDI)で、乳児の神経発達を計測したところ、高摂取群と標準摂取群の間には有意な差は見られなかった。ただ、女児と男児の差を見たところ、女児のスコアが、標準摂取群より高摂取群の方が飛躍的に伸びたことが分ったという。


特に、出生時に1.27kg未満の乳児にDHAを多量に与えた場合、スコアは標準摂取群の乳児より高かったという。

日本人は魚を伝統的に摂食してきた。日本は世界でも有数の長寿国だが、オメガ3系脂肪酸の恩恵に浴しているともいえそうだ。 オメガ3系脂肪酸は、他にも多彩な健康効果が報告されている。

American Journal of Clinical Nutrition 誌08/8月号では、オメガ3系脂肪酸が目の健康維持に有用であることを報じている。London School of Hygiene Tropical Medicine研究者グループが、新生血管型加齢黄斑変性症患者(65歳)105人と健康体被験者2,170人を対象に食品頻度調査を行った。特に、DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)について調べたところ、DHA、EPAをそれぞれ300mg/日以上摂取した群ではそれ未満の群に比較して、新生血管型加齢黄斑変性症のリスクがそれぞれ68%、71%減少することが分かったという。

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