【 2009/9 】

妊娠中の女性に欠かせない、ビタミンDや葉酸

以前もこのコーナーで、低体重出生児の増加についてふれたが、最近もNHKの特番でこのことがクローズアップされた。
日本では70年代以降、低体重児の出生が増加傾向にある。その主たる原因として、妊娠適齢期女性の過剰なダイエット志向があるとされ、母体の低栄養が胎児の生育に影響していることが指摘されている。

また、「喫煙」も低体重児の出生原因の一つに挙げられている。禁煙キャンペーンが奏功してか、近年、男性の喫煙率は減少傾向にあるが、20-40歳代女性の喫煙率は横ばいといった状況だ。

妊娠中の喫煙については、胎児への脳神経系におよぼすニコチンの影響で、注意欠陥多動性障害児の発症率が高いことも指摘されている。

また、低体重出生児は将来身体の代謝機能に弊害がおよぶという説もある。英国の科学者、バーカーが、母子の健康や栄養状態が劣っていた1920〜30年代に生誕したヨーロッパ人を追跡調査したところ、胎内及び早期乳児期の低栄養は、その後生涯にわたって身体の組成や生理機能、代謝に影響を及ぼすことが判ったという。

ともあれ、妊娠適齢期の女性は行き過ぎたダイエットや喫煙が胎児にもたらす悪影響を十分認識するとともに、適切な栄養に努めることが必要だ。

妊娠中の女性に関わる疾患に、子癇前症がある。これは妊娠中毒症とも呼ばれ、尿たんぱくの増加や発熱、むくみなどの症状が出る。
最近の報告では、ビタミンDが子癇前症の予防に役立つという記事が、Epidemiology誌09/9月号に掲載されている。 Norwegian Institute of Public Health研究者グループが、Norwegian Mother and Child Cohort Studyに参加した女性で、初めての妊娠をした23,423人を対象に妊娠中の子癇前症のリスクについて調査。被験者は妊娠15週目と30週目に健康に関する質問に答えている。

結果、ビタミンDを食事やサプリメントから15〜20マイクログラム/日摂取している群は、5マイクログラム/日未満摂取する群に比べ、子癇前症リスクが24%低くなっていることが分った。また、サプリメントの場合、10〜15マイクログラム摂取している群はサプリメントを使用しない群に比べ、リスクが27%低かったという。

妊娠前または妊娠初期に総合ビタミンの摂取が子癇前症の予防に役立つことも報告されている(American Journal of Epidemiology誌06/8月号)。
University of Pittsburgh研究者グループが、Pregnancy Exposures and Preeclampsia Prevention Study(1997〜2001年)に参加した1,835人のデータを分析したところ、太りすぎではない女性で最低妊娠1週間前および妊娠3ヶ月に総合ビタミン剤を摂取したグループは、この期間摂取しなかったグループに比べ、子癇前症のリスクが72%低いことが分かったという。

ちなみに、ビタミンで妊娠適齢期の女性に欠かせないものとしてはビタミンB群の葉酸がある。 葉酸が欠乏すると、胎児に神経管障害が生じる恐れがあるとされ、米国では妊娠適齢期の女性に必要量の摂取を薦めている。1998年には、米国政府はパンやパスタなど全ての穀類製品に葉酸添加を義務付けている。

葉酸の有用性については、心臓病のリスク低下などが報告されているが、最近の報告では、多量および短期間の葉酸摂取は血圧降下に有用であると、European Journal of Clinical Nutrition誌09/8月号が報じている。
Polyclinic of Modena研究者グループが、健康体の閉経期後女性30人を2群に分け、それぞれ5mg/日の5-メチルテトラヒドロ葉酸か、プラセボを3週間投与した。
結果、収縮期血圧および拡張期圧が葉酸群でそれぞれ、平均4.5mmHg、5.3mmHg降下したことが分った。また、ホモシステイン値も葉酸群で11.8マイクロモール/L低下したという。プラセボ群の低下は8.7マイクロモール/Lだったという。

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