【 2010/12 】

肥満・心臓病対策で、トランス脂肪酸を排除

肥満大国といわれる米国。さまざまな疾患の温床となる肥満に、今米国は頭を悩ませている。
この12月、米国保健社会福祉局より「ヘルシーピープル2020」が公表された。アメリカ人の健康作りのために10年ごとに出される指針で、2000年に肥満はアメリカ人の約25%を占めていたが、2010年までには15%に削減するという目標を掲げていた。
しかしながら、2010年になっても肥満人口は減るどころか、逆に34%にまで大幅にアップ。次の10年は実現可能な目標値をと、2020年版では30.6%と大幅に緩めている。

肥満は心臓病のリスクを高める。米国疾病対策予防センター(CDC)によると、アメリカ人の約25%が心臓病患者で、全死因の40%を占め、死因では第1位という。

アメリカの中でも、とくにニューヨーク市は肥満対策に熱心だが、このままでは肥満に歯止めがかからないと業を煮やしたのか、12月、ニューヨーク市のブルームバーグ市長は、クーポン券での炭酸飲料の購入禁止を打ち出した。砂糖を多く含む炭酸飲料は肥満や糖尿病の元となる。そのため、月間2400ドル未満の低所得者に与える食糧クーポン券では炭酸飲料が購入できないようにするというもの。一方で、そうした強硬策が奏功するのかどうか疑問視する声もあがっている。

ニューヨーク市では、近年若年層の間で心臓病による突然死が増えているため、ファーストフード店へはカロリー表示を義務付けたり、2006年12月には、市内の飲食店にマーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸を1食あたり0.5g未満にするよう定めている。

トランス脂肪酸は、マーガリンなど植物油に水素を添加して硬化させる過程で生成されるもので、「悪玉コレステロール」といわれる低密度リポタンパク(LDL)を増加させ、心臓病のリスクを高めるといわれている。

ここ数年、心臓病のリスクを低下させるためには、「トランス脂肪と飽和脂肪を減らす」ことが重要、という議論が高まっている。米国では、ニューヨーク市だけでなく、2008年7月に、カリフォルニア州のアーノルド・シュワルツェネッガー州知事も、州内の飲食店でトランス脂肪酸を含む調理油やマーガリン、ショートニングの使用を禁止する法案に署名している。

こうした米国でのトランス脂肪酸による健康被害への懸念が日本でもここ数年喧伝されたせいか、セブン&アイ・ホールディングスが、トランス脂肪酸を含む食品を全廃する方針であることが報じられている(12月26日付け朝日新聞)。同社では、トランス脂肪酸を含む商品を原則として売り場には置かない方針で、まずはコンビニなどの商品での全廃を目指すという。

心臓病のリスク低下に関する最新報告では、オリーブオイル成分が心臓の健康維持に有用であることが、British Journal of Nutrition誌10/11月号で報じられている。 Universidad Complutense de Madrid研究者グループは、20歳から45歳でBMIが18〜33の健康体被験者22人を対象に調べた。被験者には、オリーブオイル成分のヒドロキシチロソル(45〜50mg)を豊富に配合したヒマワリオイルか、ただのヒマワリオイルのどちらかを10〜15g/日、3週間与えた。


結果、総コレステロール、LDL、HDL値に差は見られなかったが、酸化LDLに関して言うと、ヒドロキシチロソル投与群では79.8U/Lから64.1U/Lへ低下したことが分かったという。

また、American Journal of Clinical Nutrition誌10/11月号では、マグネシウムが女性の心臓突然死予防に有用であると報じている。

マグネシウムは緑葉野菜、肉、穀類、ナッツ類、ミルクなどに多く含まれるが、Brigham and Women's Hospital、Harvard Medical School研究者グループが、88,375人を対象にしたNurses' Health Studyを分析した結果、マグネシウム摂取を0.25mg/dl増加するごとに心臓突然死のリスクが41%低下することが分かったという。

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