健康食品の利用、安全性や制度の現状
食品に関するリスクコミュニケーション
〜シンポジウム「健康食品と上手くつきあう方法」

2010年10月1日(金)、東京都星陸会館で、厚生労働省、消費者庁、独立行政法人国立健康・栄養研究所が共同で主催するシンポジウム「健康食品と上手くつきあう方法」が開催された。近年、健康志向から健康食品の需要が高まっている。健康食品の制度や利用の現状について各専門家より講演が行われた。

健康食品の安全性確保について
厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課新開発食品保健対策室 健康食品安全対策専門官 松井 保喜

2001年4月より、「保健機能食品」制度施行

いわゆる健康食品のうち、一定の条件を満たした食品を「保健機能食品」と称することを認める制度が2001年4月より施行されている。 この制度によりいわゆる健康食品が、国への許可等の必要性や食品の目的、機能性の違いによって「特定保健用食品」と「栄養機能食品」の2つのカテゴリーに分類されるようになった。

なかでも特定保健用食品は個別に生理的機能や特定の保健機能を示す有効性や安全性等に関する国の審査を受けて認証を得なければならないため、認知度や安全性に対する信頼も消費者から高い商品となっている。

安全性の検証が必要な食品

また、行政も保健機能食品以外の健康食品の安全性を確保するためにさまざまな努力をしているが、もっとも重視しているのが「新開発食品」に関するものであるという。

一例を挙げると、東南アジアでは乾燥した状態で比較的日常的に摂取されているアマメシバという植物は、国内で死亡事故が発生した事例が報告されているため、現在販売が禁止されている。

しかし最終的にこのアマメシバに含まれるどんな物質が有害であったのか、摂取量の問題なのか、併用しているサプリメントや食品との相互作用であったのか原因は特定できていないままだという。他にも松の皮や泥など、海外では摂取されていても日本では禁止されているものがいくつかある。

栄養機能食品は現在のところビタミン類12種類とミネラル類5種類のみであるが、国に対し個別の許可申請や届け出を行う必要のない自己認証制度で流通されているため、その商品の品質や信頼性について管理しきれない部分がまだまだあるという。

第三者認証制度がスタート

その他、安全性を確保するために取り組んでいることが、(1)原材料の安全性の確保(2)製造工程管理(GMP)による安全性の確保(3)第三者認証制度の確保である。特に、製造段階における危害発生防止のために、原料の受入れから最終製品の出荷に至る全行程において、一定の品質管理のためのさまざまなチェック機能を設け、これらの適切な管理が行われているかの記録の作成や保存の指導を行政で行っている。

原材料の安全性の確保については文献検索で安全性、毒性情報を収集することがメインとなっているが、食経験に基づいた安全性を確保できない場合は毒性試験を行うように指導している。しかしこれら2つの対策が一定の水準に達したものになっているかを客観的な立場から確認されることが極めて重要との観点から、第三者認証制度がようやくスタートし、年内には規定のマークが貼られた食品が流通される見込みという。

健康食品による健康被害、医師会から厚生労働省に報告されるシステムが今年からスタート

健康食品を摂取して健康被害が起こってしまった場合、その食品の摂取を速やかに中止し、市町村や都道府県に届け出をすることが望ましいという。地方自治体からは厚生労働省に報告が行われるため、厚生労働省は情報提供などで被害拡散防止のための対応を速やかに行うことができる。また疑われる食品の情報収集や評価、食品名の公表の判断も行う。

また健康被害が酷い場合はもちろん医師に相談することになるのであるが、医師だからといって必ずしも健康食品についての知識があるわけではないので、厚生労働省と医師会が中心となって健康食品の健康被害の事例や可能性、消費者の現状などをとりまとめた医師用の冊子制作・配布し、被害が医師に相談された場合は医師会を通じて厚生労働省に報告されるシステムが今年からスタートしたところだという。

アドバイザリースタッフの養成や消費者教育など課題も残っているが、生産段階での安全性の確保と、医師との連携など、行政の取り組みも少しずつではあるが前進、進化していることを報告した。

健康食品の制度と現状--保健機能食品制度と食品表示について
消費者庁食品表示課 衛生調査官 芳賀 めぐみ

3月、「食品表示に関する一元的な法体系のあり方ワーキングチーム」設置

食品表示について、消費者庁が担当する法律は食品衛生法、JAS法、健康増進法の3つである。食品表示について消費者の選択の機会と確保をするため、食品表示に関する一元的な法体系のあり方について検討し、必要な措置を講じることが消費者庁の主な業務となる。

今年度の3月には「食品表示に関する一元的な法体系のあり方ワーキングチーム」が設置され、食品表示に関する諸外国の制度や国際ルールについての情報収集、有識者や関係団体からのヒアリング、執行現場における実施の把握などを行いながら、さまざまな業務、検討をすすめているという。

トクホ食品、許可後の科学的知見収集の更新などの問題

現在消費者庁において早急に対応すべき事案としては、特定保健用食品の表示許可制度について手続きの透明可を図ること、許可後に生じた新たな科学的知見をどのように収集するか、そして健康食品の表示、広告規制について、虚偽・誇大広告の規制執行、関係部局、団体との連携促進などが議題として挙っているという。

特に、エコナ問題をきっかけとして、許可後に生じた新たな科学的知見の収集についてはどのように更新していくのか、重要な課題となっているという。

トクホ表示許可証にも「新たな知見を入手した際には、遅滞なく消費者庁食品表示課まで報告すること」という一文が示されているのみで、実際に報告された事例はゼロであるという。この問題について新たな施策をどのように講じていくかはまだ議論中であるとのことだが、トクホマークを取得することも、それを継続していくことも今後はより一層厳しくなりそうである。

ネット監視業務に力をいれる

健康食品全般についての表示、広告規制については、食品衛生法、景品表示法、薬事表などが用いられて表示の取り締まりを強化している。消費者庁でも事業者チェック、インターネットチェックをおこなっているが、消費者から通報される案件も含め、違法が疑われる広告については地方校正局、または消費者庁において、調査を速やかに行い、事業者への改善を指導、事業者が指導に従わない場合は国民の健康の保持増進に重大な影響を与える場合があるとして勧告、命令を行うことになっている。消費者庁としてもネット監視業務については特に力をいれているという。

健康食品の表示に関する課題については、消費者委員会でさらなる議論がすすめられており、特定保健用食品についても新たな制度設計のあり方について引き続き検討がされており、また健康食品全般の表示についても効果的な規制や適切な情報提供の仕組みを検討しているとまとめた。

さらに消費者庁としてはこれらの表示問題について、適切で充分な科学的証拠の裏付けを重視すること、消費者に対する科学的な教育の支援を行うことなどにも今後力をいれていきたいと考えているという。

健康食品の利用について
独立行政法人国立健康・栄養研究所 情報センター長 梅垣 敬三

有効成分、摂り方でメリットとデメリットが表裏一体

健康被害を受けやすい健康食品の多くは錠剤やカプセルの形態であるものが多いが、特定成分が濃縮されているため、過剰摂取しやすいことが原因と梅垣氏。そうした製品は、特定成分を用意に摂取できるメリットと過剰摂取しやすいデメリットが表裏一体であるということを消費者は認識しなければならない。

また違法な健康食品の多くが、海外から個人輸入で持ち込まれたもの、インターネットで販売されているという特徴があるという。違法な健康食品とは医薬品成分が含まれていたり、有害物質が混入しているものだが、売る方も買う方も、最初から医薬品的効果を求めて売買していることが多い。そのため、そうした違法行為が生じやすいと指摘する。

アレルギーや疾患者が摂った場合の検証がまだ不十分

健常者3万人を対象に健康食品利用の調査を行ったところ、70%近くが日常的な健康の保持・増進のために利用している、と回答し、病気の治療のために利用していると回答したのは6.4%だった。また、入院患者でかつ健康食品を利用している人121人に同様の質問をしたところ、健康維持が28%、病気の治療が38%と、健康食品を治療目的で摂取している人が40%近くいることが判明したという。

健康な人とすでに病気に罹患している人では健康食品に対する理解や期待が大きく異なる。健康食品でトラブルにあった人の多くが、すでに健康になんらかの問題を抱えている人が多いという見方もできる。

病気の治療や治癒を目的に健康食品を摂取すると被害に合いやすい場合もあるが、これには幾つかの原因がある。まずはアレルギー体質や病者の体質との問題。健康食品はあくまで健康な人を対象に、補助的な役割で製造開発されているために、アレルギーや病気の人に対しての効果や副作用についてはほとんど調べられていないといえる。

医薬品との相互作用の検証も今後の課題

医薬品との相互作用の問題も近年とくに指摘されはじめた問題だ。食品から摂る栄養であれば、相互作用などは起こさない微量な栄養素であっても、濃縮された状態で摂取すると、医薬品との相互作用が起きやすい。この問題については科学的に調査していくことが非常に難しい。

健康食品を病気の治癒治療目的では使用するのであれば医師に必ず相談すること、そうすることで健康食品による健康被害は大きく減るのではないかとまとめた。



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