アレルギー物質表示の動向、米国人気素材など報告〜「食品開発展2010」

2010年10月13日(水)〜15日(金)の3日間、東京ビックサイトで、食品素材と技術を集めた「食品開発展2010」が開催された。今年で21年目を迎える食品開発展には今回600社の出展があり、食品開発にかかわる新素材、新技術、安全性確保のための食品産業分野などに関する展示が行われた。

アレルギー物質を含む食品の近年の表示動向
生化学バイオビジネス

アレルギー反応による重篤な児童、およそ2万人

近年、食物アレルギーに罹患した子供が急激に増加傾向にあることは周知のとおり。食品メーカーや企業にとって食物アレルギーに関わる事故を起こさないための企業努力は極めて重要な課題となっている。

日本で食物アレルギーによる死亡事故はこれまでに一例のみ報告されており、その内容は1988年に札幌市内で喘息持ちの小学校6年生が給食の蕎麦で具合が悪くなり早退させたところ、帰宅途中にアレルギー反応でも重篤な症状であるアナフィラキシーの症状が発症し、呼吸困難に陥り死亡したというものであった。裁判では担任の教諭と札幌市教育委員会の安全配慮義務違反、過失とされた。

この事故報告以降、文部省が全公立小中高3万6830校(約1277万人)を調査しているが、平成16年度には食物アレルギーの児童や生徒がおよそ33万人(全体の2,6%)を超え、また命に関わるアナフィラキシーショックを起こしたことのある子供は1万8323人(0,14%)もいることがわかった。

食物アレルギーに有効な医薬品はない

食物アレルギーとは本来栄養となる食物(たんぱく質)が、ある人にとっては免疫の異常反応を誘発する物質となり引き起こされる症状で、微量の摂取でもじんま疹、湿疹、下痢、嘔吐などアレルギー症状を呈し、アナフィラキシーショックを引き起こすと生命の危険があることからも大変危険な症状である。

しかしながら現在のところ食物アレルギーに有効な医薬品は開発されておらず、食物アレルギーを誘発しないためには、アレルギー症状を誘発する食品を摂取しない、ということ以外方法がない。アレルギー症状を誘発する食品を摂取しないためにはアレルギー食品を正しく表示する制度が必要であることから、食品衛生法により取り扱いがされるようになったという経緯がある。

原材料の表記など正確な情報提供が求められる

食品衛生法では保健所等による監視を行っており、企業が原材料や特定原材料の有無について情報提供をきちんと行っているかを確認する業務、そして収去検査(いわゆる抜き打ち検査)を行うことで違反がないように取り締まりを強化している。違反が発見された場合は、販売停止措置や営業停止措置、2年以下の懲役または200万円以下の罰金、法人では1億円以下の罰金が科せられる。

企業自らが表記漏れや誤表記などに気付いた場合には速やかに自主回収をすることになるが、自主回収はその旨の謝罪広告を含む広告費用、回収費用等が大幅にかかるだけでなく企業の信用も大きく失墜し、企業にとっては何のメリットもないということになる。そこで、企業のリスク低減のためには正しい表示に注意を払うだけでなく、一歩進んだ自主検査を導入することが求められているという。

アレルギーの特定原材料7品目、準ずるもの18品目

例えば「卵を原料としていないはずの○○を使用して料理をしたら子供がアレルギー反応を起こした。本当に卵を使っていないのですか?」という問い合わせがあったとき「工場では卵を使った製品を作っているが、○○を製造する前にライン清掃をおこなっているため可能性は少ないと思います」と、回答するのでは不十分であり、卵が混入していないということを証明しきれない。

自主検査を行っていれば「工場では卵を使った製品を作っていますが、清掃後、法規の基準をクリアした検査をして、卵が混入されていないことを確認・記録しています」と返答できれば、卵が入っていないことを証明するのに役立つだけでなく、他の食品でのアレルギーをすみやかに見つけることへ貢献することにもなる。

日本国内では現在特定原材料7品目に卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生が指定されており、その他特定原材料に準ずるものとしてあわび、いか、いくら、オレンジ、キウイ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンの18品目が定められている。いずれも食品には欠かせない原材料であるため、食品企業はアレルギー事故の可能性と常に背中合わせであることに間違いない。自主検査の導入は今後さらに求められるであろう。

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9兆円を超える米国健康食品市場

米国の健康食品市場規模はすでに9,2兆円を超えている。日本の動向と大きく異なるのは、国内でのシェアはインターネットや通販が大きな割合を占めるのに対し、米国では自然食品や健康専門店、量販店といったストアマーケットでその80%以上がシェアされているという点である。

2008年のリーマンショックの影響もあり、米国でも未曾有の不況が現在も続いているが、2008年の時点での健康食品市場は8,8%の成長で、2009年は4,4%とやや勢いが低下したものの成長は続いている。

米国では保険の問題もあるが、医療費を節約するためにサプリメントをより多く摂取しようという文化がある。失業や所得減少がサプリメント購入促進に影響を与える傾向があるからだ。しかし同じ健康食品でも単価の安い製品が売上を堅調に伸ばしており、有名ブランドからストアブランドに移行する消費者の動向は見受けられるという。

サプリメントが市場の25%を占める

ただ、新製品の開発は残念ながら遅延傾向にあるという。ストアマーケットでの購入が米国での販売チャネルの主力であることに変わりはないが、オンラインビジネスは急成長の傾向にあるという。9兆円を超える健康食品市場のうち、サプリメントは全体の25%を占め、成長率は2008年、2009年ともに6%を超えているという。

業界の動向としては大手企業がM&Aなどで買収したり、されたりを繰り返しており、また中国への進出を発表する企業も増加している。受託加工メーカーも国内から中国へ移行しており、米国の健康産業においても中国は欠くことのできないビジネスパートナーの役割を果たしている。

今後さらにオーガニック市場の拡大が予測

素材動向としては、ここでも中国素材(タツナミ草など)に注目が集まっており、同様に世界経済で急成長をみせているインドの素材(アムラなど)にも期待や注目が集まっているという。また睡眠誘導サプリメントが100億円市場を超え、メラトニンは20%の成長、日本国内では医薬品であるL-トリプトファンも人気を集めている。

その他、人気のある素材としては、ノコギリヤシ、ビルベリー、イチョウ葉エキスなどがあるが、これらも含め人気のある素材はすぐに虚偽素材が作られてしまうため、信用できるサプライヤーを選択することが重要であるという。日本では人気が停滞しているコエンザイムQ10も引き続き人気があるが、日本同様に科学的根拠と安全性の証明が強く求められている。

今後は自然食品の拡大とオーガニック食品の拡大が予測される他、アンチエイジング人気の高まりから低分子のコラーゲンなどにも注目が集まり、ダイエットの観点からはリポサンウルトラR(スーパー脂肪吸着キトサン)なども注目の素材であるとまとめた。



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