食生活へのトクホ商品の上手な取り入れ方
〜トクホ食品制度誕生20周年記念フォーラム

2011年9月29日(木)、特定保健用食品制度誕生20周年を記念して「トクホフォーラム」が開催された。トクホの日(10月9日)制定一周年を迎え、食生活へのトクホ商品の上手な取り入れ方など講演が行われた。

若返りはおなかから!
順天堂大学医学部免疫学 特認教授 奥村 康

毎日5〜6000個ほどがん細胞ができる

免疫学の第一人者として知られる奥村氏は免疫力の差が人間の健康状態を大きく左右しているとし、以下のように解説した。
私たちをとりまく環境には、人間の健康を脅かすウイルスや細菌などの病原体が数多く存在する。

例えば、花粉やインフルエンザウイルスでなど同じ生活環境にあっても、花粉症になる人、風邪を引きやすい人がいる。両者を分けているのがまさに免疫力の差である。

人の身体は60兆個の細胞から成り、1日におよそ1兆個が新しい細胞と置き換わっている。毎日新しく生まれ変わった細胞のうち、5〜6000個ほどはがん細胞であり、生きることはそもそもがんを生産することでもある。

ストレスが免疫力を低下させる

毎日増殖するがん細胞をいち早く攻撃して処理するのがNK細胞で、街の警察官のように体内をパトロールし、がん細胞やウイルス感染細細胞など不要なものを取り除いている。 しかし年齢とともにNK細胞の働きは衰え、ウイルス等の感染症にかかりやすくなり、がん細胞の増殖に繋がる。

こうした、身体に害を与える異物と戦い排除しようとする人体のしくみが免疫系と呼ばれる。この免疫系の力、つまり免疫力は加齢や栄養不足、高齢化、ストレスなどで低下するが、とくにストレスとの関わりが大きいと考えられている。

しかし現代社会に生きる私たちはストレスを断ち切る事は不可能で、せめて栄養の側面から免疫を高めるアプローチすることが必要不可欠である。

免疫力、ビタミンやミネラルは高めるが脂肪は抑える

免疫力を高めるには栄養価の高いタンパク質、ビタミンやミネラルの摂取が重要だが、一方で脂肪は免疫系を抑える方向で働くため、摂り過ぎは免疫の働きを弱めてしまうことになる。

またプロバイオテックスやプレバイオテックスなどは免疫調整機能があり、アレルギー発症の抑制効果なども報告され、重要性が認識されている。他には大量のビタミンCとベータグルカンも腸管免疫の活性に役立つ。

栄養からのアプローチは非常に重要だが、ストイックになりすぎてストレスになるようであれば逆効果という側面も併せ持つ。そのため、ストレスのないように楽しく生活することが一番の予防ではないかとまとめた。

脂質を見つめ直して健康度アップ!〜健康いきいき!寿命ものばすぞ!〜
東京慈恵医科大学付属柏病院 総合診療部長 多田 紀夫

動脈硬化の前段階である脂質異常の予防が大切

人は血管とともに老いるといわれる。血管の老化である動脈硬化を予防するために、その原因と考えられるコレステロールをコントロールし、メタボリックをいかに制御するかが血管だけでなく健康の鍵になると多田氏はいう。

長寿時代を迎え、医療技術はどんどん進歩しているが、いかに病気を克服するかというステージから、今はいかに加齢がもたらす細胞障害に陥らないように予防するかが重要となっている。

こうしたセルフメディケーションの観点からも中性脂肪値やコレステロール値に注意を払うのは当たり前となっているが、動脈硬化の前段階としてこの脂質異常を予防することが重要と多田氏。

自覚症状がないため、発見が遅くなる

血液中に溶け込んでいるコレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸の4つの栄養素を血清脂質という。いずれも体内には必要不可欠な栄養素である。しかしコレステロールと中性脂肪といった脂質が血液中に増え過ぎると、脂質異常と診断され、動脈硬化をはじめとする疾患に非常に罹りやすくなってしまう。

脂質異常症と診断された場合、遺伝子の異常や他の病気(甲状腺機能の低下など)、薬の影響なども考えられるが、最も多いのは生活習慣の乱れによるもので、男性は30代、女性は50代から増加傾向にあると多田氏。自覚症状がないため、発見が遅くなるのも厄介な点という。

普段からの生活改善で軽減が十分可能

しかしそのまま放置しておくと、体内では確実に変化が起こり、血管が閉塞されたり、急性膵炎を引き起こしたり、メタボリックシンドロームに陥り、そうしたトラブルが重なることで脳梗塞、大動脈瘤、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症などのリスクも高まる。

脂質異常やそれに伴う動脈疾患は普段からの生活改善で軽減が十分可能と多田氏。つまり血圧やコレステロール値への配慮はいずれも食生活からアプローチできるし、禁煙や運動も効果的であるという。

自分を守り大切にすることが自己の健康につながり、社会にとっても国家にとっても有益であると多田氏。脂質というものに目を向けて食生活や生活習慣をほんの少し改善していくだけでも十分な効果が期待できるとまとめた。


Copyright(C)JAFRA. All rights reserved.