ワイルドブルーベリーの育成と発展
〜第9回デザート・スイーツ&ドリンク展

2012年4月4日〜6日、東京ビッグサイトで和・洋菓子と飲料の新たなトレンドを紹介する「第9回デザート・スイーツ&ドリンク展」が開催された。出展者や主催者によるデモンストレーションや新たなトレンドの講演なども数多く行われ、業界の最新情報が盛りだくさんの内容となった。ここではアンチエイジングの高まりから注目を集める食材「ワイルドブルーベリー」に関するノバスコシア農業大学 デビット・パーシバル博士の講演を取り上げる。


カナダ東部及び米国メイン州に自生

北米原産のブルーベリーは3種類あり、ワイルドブルーベリーはそのうちの1種である。ワイルドブルーベリーはローブッシュ、つまり野生種であり、栽培種であるハイブッシュブルーベリーとは多くの点で異なり、天然の恵みをより多く残しているのが特徴。

ワイルドブルーベリーはカナダ東部及び米国メイン州に自生している。この土地は今から約1万3千年前に大陸氷河が離れていった場所で、環境的には非常に厳しく、今もなおその痕跡が残っている。氷河が離れた後に、丸い巨石と砂や砂利の厚い層だけが残され、この層の上にはわずか数センチの石質の土が積もっているだけという。

この地域は厳しい冬の季節にはマイナス35℃にまで気温が下がり、土地はいつも野生状態で人が近づくことは非常に困難で、土壌も強い酸性であるため他の植物の成長には適さないとパーシバル博士。

より鮮度が高く、最適な時機を逃さず収穫

しかし、ワイルドブルーベリーはこうした厳しい環境でも、何千年にもわたって力強く自生してきた。近年もその生態は基本的に変わっていないが、現在は自生しているエリアに人間が若干手を加えつつワイルドブルーベリーのより高度な育成と収穫を行っているという。

そこで働く人間は、ワイルドブルーベリー以外の植物を抑制することでワイルドブルーベリーの成長を促進させる役割を担っている。かつては手摘みであった収穫を機械を入れることでより鮮度が高く、最適な時機を逃さず収穫できるようになったとパーシバル博士。

「アンチエイジング・フルーツ」として人気

現在もワイルドブルーベリーは荒れたヒースランド地帯で2年サイクルで生産・収穫されている。ワイルドブルーベリーの収穫時期は8月〜9月。粒は他の品種より小粒だが、甘酸っぱさは栽培種よりも際立ち、カナダや北米を中心に多くの料理にも用いられ、食卓を彩っている。

そして近年注目されているのが、ワイルドブルーベリーが持つ機能性。カナダや北米では「アンチエイジング・フルーツ」「パーフェクト・フルーツ」といわれ年々人気が高まっているとパーシバル博士。

活性酸素除去能力が高い

ブルーベリー全般に非常に高い数値で含まれ、もちろんワイルドブルーベリーにも含まれる優れた機能成分はポリフェノールの一種であるアントシアニンで、果物の中でもとくに多く含まれている。スーパーフードと呼ばれる食品を研究するスティーブン・プラット氏の研究によると、ポリフェノールには肌の健康を保つ作用があり、他の食物に比べて人体に有効に働きかけることがわかっているという。

例えば、アントシアニンによる抗酸化作用が活性酸素の除去や免疫賦活作用、炎症抑制作用など人体にとって有益なさまざまな効果を発揮することが示されている。

ワイルドブルーベリーの活性酸素除去力は、同様に活性酸素除去能力が高いといわれているガーリックやケール、ほうれん草やいちご、ブロッコリーよりもさらに高いことも示されている。数年前までは眼の健康に役立つ食品として知られていたが、ここ数年で広い意味でのアンチエイジング・フルーツとして各国から注目を集めているという。

網膜内のロドブシンの再合成を活性

アントシアニンは人間の眼球に存在する毛細血管を強化し、血液循環を改善し、眼の隅々に酸素や栄養成分を送りながら活性化する効果があることが知られている。その結果、眼の焦点を合わせやすくなり、眼の疲労回復などにも役立つ。

また網膜内に存在するロドブシンという成分を再合成し活性する効果も知られている。ロドブシンは眼球内の光りを感知し、それを脳に伝達する働きを担うが、この物質が再合成されることで、眼の疲れ予防になり、眼病や視力を改善する効果につながることもわかっている。

天然の甘味にも関わらずカロリーは極めて少ない

さらにワイルドブルーベリーそのものには、コレステロール、脂肪、塩分が含まれず、天然の甘味があるにも関わらずカロリーは極めて少ないため、人体にマイナスに働くような要素がほとんど見当たらない。アントシアンニンに加え、ビタミンCや食物繊維が豊富に含まれ、他のビタミンやミネラルも多く含むため、非常にヘルシーでパワフルな食材といえる。

ブルーベリー種はどれもアントシアニンが豊富に含まれるが、ワイルドブルーベリーと栽培種をカナダのノバスコシア州大西洋食品園芸研究センターで測定した結果、総ポリフェノールはワイルドブルーベリーの方が2倍多く、またアントシアニンだけでは栽培種にくらべ40%以上も高い値を示したという。

ドライフルーツ加工もここ数年でレベルアップ

ワイルドブルーベリーは粒が比較的小さく、実がしまってつぶれにくいため、ジャムなどに加工しても形や歯ごたえが失われず、焼き菓子にもアクセントとして最適であるという。

また天然であるため、一粒一粒の香りや味が微妙に異なり、甘味や酸味にもバラつきがあり、それが加工して食べた時に深みのある豊かな味わいをもたらすとパーシバル博士。

収穫したてのワイルドブルーベリーの味や栄養素、風味をほとんど損なうことなく冷凍保存し、あるいはドライフルーツに加工する技術もここ数年で格段とレベルアップしており日本でも是非多くの人々に食べてもらえるよう、普及活動にも力を入れていきたいという。



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