健康食品の新たな機能性表示について
〜平成26年度薬業健康食品研究会シンポジウム

平成26年6月2日(月)、薬業健康食品研究会によるシンポジウムが千代田区主婦会館プラザで開催された。この中で、大阪大学大学院教授で規制改革会議の委員の森下 竜一氏が、「新たな機能性表示健康食品、医療における利活用〜健康食品の科学的エビデンスを考える」と題して講演を行った。


機能性表示の容認、各界で注目

アベノミクスの「三本の矢」といわれる成長戦略の目玉である規制改革。なかでも「セルフケアとセルフメディケーションの促進」や「医療産業の振興」については特に安倍総理自身も力を入れているといわれている。

具体的には、「トクホ商品の活性化」「健康食品産業の振興および機能性表示の容認」「農作物・加工品への機能性表示容認」「再生医療、遺伝子治療などで世界初を目指す先進医療」「医療技術の海外輸出」などだ。

特に「機能性表示の容認」については、数十年も議論されてきた課題であり、これが大きく前進するのではないかと各界から期待が寄せられている。

消費者庁が中心に、科学的根拠の考え方など今夏にも報告書

既定路線として、「いわゆる健康食品をはじめとする保健機能を有する成分を含む加工食品及び農林水産物について、機能性の表示を容認する新たな方策をそれぞれ検討すること」、「国ではなく企業等が自らその科学的根拠を評価した上で、その機能を表示できる米国のダイエタリーサプリメントの表示制度を参考にすること」、「企業等の責任において科学的根拠のもとに機能性を表示できるもの」などが概ね定められており、本年度中に結論と措置が行われる、と森下氏は解説。

この方針に基づき、現在、主に消費者庁が中心となって、「食品の新たな機能性制度に関わる安全確保の在り方」「機能性表示を行うに当たって必要な科学的根拠の考え方」「消費者にとって誤認のない機能性表示方法の在り方」について急ピッチで検討会が続けられている。これらも本年夏を目途に報告書が取りまとめられる予定だという。

臓器の健康は明記、疾病の明記はしない

新たな表示方法の参考にするとされるアメリカの「ダイエタリーサプリメント」の表示例では、例えば「カルシウムは強い骨を形成します」「魚油(DHA、EPA)は心臓、血管、循環器、関節の健康を維持します」「イチョウ葉は、脳機能と循環器の健康を促進します」といったものがある。

各臓器の健康については明確にするも疾病については書かないというルールがある。日本もこの方向で表示が認められるのではないかと予測されると森下氏。また新たな表示方法を容認するだけでなく、製造及び市販後もどのように安全性を確保するかというのが最大の論点という。

トクホとの共存、差別化という課題も

今回、機能表示が容認されるとなると、ヘルスクレームを増やしたいという意見も後を絶たないであろう。日本ではトクホ商品に、「整腸作用」「血圧調整」「骨の健康」「ミネラルの吸収」「歯と歯茎の健康」「血糖値調節」「コレステロール改善」「血中中性脂肪改善」「体脂肪改善」の9つのヘルスクレームが認められている。

しかしながら、隣の韓国では25のヘルスクレームが認められている。例えば、「疲労改善」「記憶力改善」「肌の健康」「健康改善」など、非常に魅力的なもので、参考にすべきとの声が多いという。

今年5月2日に行われた消費者庁の検討会ではこれまでのトクホ制度は廃止しないことが確認されているといわれるが、トクホ商品との共存、差別化などが課題として残っているという。

「医薬品との相互作用の有無」などどう表示するか

他にも、検討が続けられているのが「対象となる食品及び成分の考え方、並びに摂取量の在り方」について。機能性成分を表示する食品の安全性については事業者自ら評価することになる。

これについては、「食経験に関する情報の評価」「安全性試験(ヒト試験)に関する情報の評価」「医薬品との相互作用の有無」「機能成分同士の相互作用の有無」などをどう表示するかということがある。

「生産・製造及び品質の管理」についても検討

また「生産・製造及び品質の管理」についても検討が続けられている。機能性成分を含む食品の安全性を確保するために事業所は規格を設定することや検査機関で製品分析を行うなどの必要がある。

現在知られている管理法としてはHACAPP、ISO、FSSC、GMP等があるが、これらの情報開示や表示法についても議論が続いているという。また健康被害が生じた場合、情報収集体制をどのように整備するか、流通防止措置などについても引き続き検討が必要とされている。

機能性表示健康食品データブックを編集

また今後は機能性成分については「機能性表示健康食品データブック」を日本抗加齢協会が中心となって編集し、そこに第一弾として米国・EU・韓国などで既に機能性が認められているもの、および消費者庁のモデル事業で検討されたものを取り上げ、次に品質規格があり、ヒト臨床試験で有効性の確認されたものを取り上げる予定だという。

「機能性表示」だけでなく、ヘルスメディケーションの普及については、昨年8月に安倍総理自ら「健康長寿社会の実現は安倍政権の成長戦略の柱」と明言している。現在内閣には「健康・医療戦略推進本部」が設立され、「次世代ヘルスケア協議会」が具体的な活動を担っているといわれる。

この「次世代ヘルスケア協議会」は「健康寿命延伸分野における民間の様々な製品やサービスの実態を把握し、供給・需要の両面から課題や問題点を抽出・整理し、対応策を検討するため、官民一体となって具体的な対策の検討を行う場」と位置付けられている。

現在、22名の委員から成り、今後は新たな健康関連サービス市場創出のための環境整備や、それらサービスの品質評価などを行う予定だという。

パネル&フロアディスカッション

後半は3人の有識者によるパネル&フロアディスカッションが行われた。健康食品産業協議会 会長の関口洋一氏は「機能性表示の容認」という議論のなかで、未成年者や妊婦にこそ必要な栄養素もあるため、未成年者や妊婦が排除されないよう、働きかけていることを報告。

日本健康食品規格協会 理事長の池田秀子氏は、参考にしている「米国のダイエタリーサプリメント制度」について、実はアメリカでこの制度が完全に理解されているわけでないという現実を報告。

企業に委ねながらもFDAの責任も明確になっているという点、この制度が誕生して20年経過するが、修正を重ねながら続けられている点などを指摘し、必ずしもお手本として完璧ではないことを指摘した。

一般社団法人 日本健康食品サプリメント情報センター 理事の宇野文博氏は、2005年以降米国、ヨーロッパ、アジアを中心に採用されている世界最大のEBMのデータベース「ナチュラルメディシンデータベース」を紹介。広告は一切掲載せずに、中立で行うことの重要性や、有効性や摂取量については人種の違いなども考慮すべきことなど指摘した。


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