海藻ヒトエグサの「ラムナン硫酸」の機能性に着目〜食品開発展2018セミナー

2018年10月3日(水)〜5日(金)の3日間、東京ビッグサイトにて「食品開発展2018」が開催された。同展示会セミナーより、江南化工梶iヘルスケア事業部)の講演「海藻ヒトエグサ抽出物成分"ラムナン硫酸"の特徴と機能性」を取り上げる。


健康にも有益な食材

ヒトエグサは「あおさ」や「アーサ」と呼ばれ、海苔の佃煮や味噌汁の具、お好み焼きなどに広く利用されている緑藻類である。

ほとんどの人が一度は口にしたことがある食材で、国内に流通する60〜70%のヒトエグサが三重県産である。

このヒトエグサの構造を顕微鏡で確認すると、一層(一重であり、これが名前の由来だという)の細胞の集合体で、膜状になっている。

その細胞と細胞の間を満たす細胞間物質には、食物繊維、硫酸化多糖、ビタミン、ミネラルなどが豊富に含まれ、健康にも有益な食材であることが容易に想像できる。

ちなみに、三重県人は国内で最もBMI平均値が低く、肥満が少ない県民として知られているが、ヒトエグサの消費量が多いこととも関係しているかもしれないという。

「ラムナン硫酸」が、ヒトエグサの機能性関与成分

ヒトエグサの細胞間物質の組成を調べると、ラムナン硫酸が約72%、βグルカン・セルロースが23%、たんぱく質が5%となっている。

この豊富に含まれる「ラムナン硫酸」こそ、ヒトエグサの重要な機能性関与成分と考えられている。ラムナン硫酸は分岐鎖のあるラムノースの直鎖に硫酸基が結合した構造をしており、ラムノース主体の硫酸化多糖類である。

これはフコイダンの細胞間物質がほぼフコースが主体となっているのと似ているという。

フコースが人に対して有益な機能性を示すのと同様に、このラムナン硫酸にもさまざまな生体調整作用があることが推測できることから、三重県大学、鈴鹿医療科学大、富山大学との共同研究を行った。

その結果、ラムナン硫酸には@体重抑制効果・肝臓脂肪沈着抑制効果 Aコレステロール低下作用 B抗血液凝固作用 Cがん抗転移作用 D抗ウイルス作用 Eヒアルロニダーゼ阻害作用などの機能があることが明らかになった。

体重増加や肝臓の脂肪沈着が抑制

体重抑制効果・肝臓脂肪沈着抑制効果については通常食のゼブラフィッシュと高脂肪食を与えたゼブラフィッシュでの比較試験を行い、(高脂肪食を摂取すると肥満化するゼブラフィッシュだが)高脂肪食にラムナン硫酸を加えた食事を与えた。

その結果、体重の増加が顕著に抑制され、さらに肝臓の脂肪沈着が抑制されたことが確認できたという。

コレステロールに対する効果については、成人男性を対象とした臨床試験を行った。ラムナン硫酸を6週間摂取したところ、善玉コレスレテロール(HDLコレステロール)に影響を与えずに、悪玉コレステロール(LDL)と総コレステロールを低く保つことが確認されたという。

さらにこの試験では、エコノミー症候群などの原因になるとされる血小板凝集や血液凝固による血栓増加の抑制も見られた。抗凝固剤である「ヘパリン」と比較してもラムナン硫酸には同等以上の血液凝固抑制効果が見られたという。

ラムナン硫酸、美容や抗アレルギーでも期待

日本人の死因の上位といえば「心疾患」「脳血管疾患」であるが、ラムナン硫酸にはこのいずれをも予防することが期待できるのではないか、と期待が寄せられる。

さらに面白い点として、マウスの試験であるが抗ウイルス・抗インフルエンザ効果も見られたという。

また、私たちの体内に存在しているヒアルロン酸は加齢とともに体内から減少し、これが肌の老化や関節の痛みに関与することはよく知られている。

ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸を分解する酵素で、アレルギーの際にヒスタミンの放出に関与していることもわかっているが、これが体内で活性するとヒアルロン酸が減少することにより肌トラブルやアレルギー症状が起こりやすくなる。

ラムナン硫酸にはヒアルロニダーゼ酵素活性を抑制する作用があることも確認されており、このメカニズムがより明らかになれば、美容成分や抗アレルギー・抗炎症の成分としても活用できるかもしれない、と今後の研究や活用について展望を語った。


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