美容と健康で注目されるケイ素〜ケアメディカル産業展2018

2018年11月21日(水)〜22日(木)、大田区産業プラザにて「ケアメディカル産業展2018」が開催された。同展示会セミナーより山野井 昇氏(元東京大学大学院医学系研究科 医学者)の講演「驚異の美のミネラル〜ケイ素できれいになる」を取り上げる。


予防医学、根底に水や空気や土

山野井氏は、40年ほど東京大学医学部研究室で人工心臓のパーツ製作をはじめとした医工学技術の研究を行ってきた。その過程で予防医学の重要性に気づき、方向転換を図ったという。

私たちの生命力や自然治癒力に関わるものは、食事や生活習慣はもちろんだが、根底には「水や空気、そして土」がある。

そこで最初に研究したのが「空気」だった。その過程でマイナスイオンの研究に注力。現在はマイナスイオンの作用も一般にもよく知られ、ドライヤーや空気清浄機など家庭用品にも幅広く利用されるようになっている。

次に研究したのが「水」。水といっても産地によって物性が大きく異なる。水は飲むだけで健康になれる水もあるが、水素水は活性酸素を除去する働きがあることもわかった。

しかし水には効果効能を記すことはできない。同じ場所で採取される水でも毎日その物性が変質していて、評価することや定義することは科学者でさえも難しい。

微量ミネラルの摂取が重要

今、山野井氏が注目しているのが「大地=土」。私たちの足元の土に一番多く含まれるのが「ケイ素」という物質である。

ケイ素は別名シリカともいい、電子部品や半導体の材料として長く用いられてきた歴史がある。このケイ素が健康や美容にも影響を与えるということは、今までほとんど考えられてこなかった。

しかし、人間の体の構成から考えると、ケイ素は非常に重要なのではないかと山野井氏は考えるようになったという。人体を構成する元素は多い順から酸素、炭素、水素、窒素の4つで96.6%を占める。

しかし、残り約4%の「微量ミネラル」も重要で、多い順に、カルシウム、リン、イオウ、カリウム、ナトリウム、塩素、マグネシウム、ケイ素、鉄、フッ素、亜鉛、銅となる。

例えば、鉄(人の体に約4g含まれる)はわずかな欠乏でも、貧血や免疫力の低下など不調が生じる。もちろん、カルシウム不足も大きな問題となる。

つまり、人間の体はわずか4%のミネラルによって支配されている部分がかなり多いことが、これまでの多くの研究によって解明されている、と山野井氏。

世界各国で土を食する風習

ではケイ素はどのような役割を果たしているのか。ケイ素は漢字で「珪」と書くが、まさに「土」の「王様」で、地球の分身とも言える存在である。

ケイ素は半金属、金属、非金属全ての特性を持っているという極めて珍しい特徴もある。

最近は建築素材として「珪藻土」の健康効果に注目が集まっているが、ケイ素素材で有名なものといえば七輪で、七輪は軽量なだけでなく、断熱性の高さ、保温性の高さ、赤外線の発生量の高さなどから焼き物料理には欠かせない。

ちなみに、モンゴルでは幼い子どもに土を食べさせる風習がある。中国語で「腹」は「肚」と書くが、「おなか」と「土」には関係があることは誰もが知っている。

また、ネイティブアメリカンには土を癒しや心労回復のために食する風習があった。このように世界各国でケイ素が健康のために古来より利用されてきた。

日本でも江戸時代には土(珪藻土)を食べることがあった。ケイ素は人体の中では、リンパ液と脳下垂体に最も多く含まれ、腸内環境や免疫にも関与している可能性が高いこともわかってきている。

ケイ素不足でアトピー性皮膚炎の可能性

ここ数年はケイ素水(シリカ水)が有名だ。これまでに流行してきた「健康素材」は、実はケイ素が多量に含まれているものがほとんどといえる。

ユーグレナ、スピルリナ、クロレラ、オメガ3(DHAやEPA)、キトサンなど、これらは海産物由来のものが多いが、海産物全般(海藻類や魚介類など)に非常に豊富なケイ素が含まれている。つまり健康素材のルーツはケイ素にあるのではないかと山野井氏。

特にフィジー、サモア、トンガ、ハワイなどのポリネシアの人たちは強い紫外線にさらされる環境下で生活をしているが、肌が丈夫で肉体的にも強靭な人が多い。

逆に、ケイ素が不足すると、シミ・シワといった肌トラブル、骨粗鬆症、認知症、動脈硬化、EDなどが起こりやすいこともわかってきている。

マウスの試験では、ケイ素を十分に与えると胸腺の白血球が増えて免疫力が高まることや、ケイ素を十分に与えた雛は骨が強く立派なトサカを持った鶏になることなどもわかってきている。

つまり、ケイ素が骨の強度や肌のヒアルロン酸量の産生にも関与しているということが明らかになりつつある。

現代人は土から離れた生活をし、土のついた野菜をみることもほとんどなく、ケイ素が不足しやすい傾向にある。このこととアトピー性皮膚炎患者の増加は関係している可能性が高いといえそうだ。

ケイ素の恩恵を多く受けている

現在、ケイ素は「コラーゲン、ヒアルロン酸、グルコサミン、ビタミンD」の合成に関わる重要なミネラルであることが解明され、美容クリームなどに用いられることが多い。

特にヨーロッパではシャネル、サンローラン、クラランスなどの一流ブランドが基礎化粧品に使用しているが、日本でも資生堂やポーラが使い始めている。

ケイ素の利用は美容面だけではない。ケイ素水(シリカ水)の飲用、水溶性ケイ素サプリメントの利用などで健康維持にも利用できる。

また、アクアマテリアル(水でできたプラスチック素材)、再生医療やiPS細胞での活用、畜産物や農産物の栄養価の向上、人工骨や人工関節への活用など、大きな可能性を秘めている。

世界最古の花として知られる「大賀ハス」は2000年前(弥生時代)のものだが、この秘密にも「泥(ケイ素)」があるのではないか。

また遺跡から発掘される刀や装飾品なども、泥でコーティングされたものは状態がよく、錆も少ないのは、泥に抗酸化の力があるからに他ならない。まだまだこれから研究が待たれるケイ素だが、私たちはケイ素の恩恵を多く受けているようだと山野井氏はまとめた。


Copyright(C)JAFRA. All rights reserved.