サラシア、糖吸収抑制で古代より使用
〜第37回健康博覧会セミナー


2019年1月23日(水)〜25日(金)、東京ビッグサイトにて「第37回 健康博覧会」が開催された。同展示会セミナーより、吉川 雅之氏(京都薬科大学 名誉教授)の講演「大地からの贈り物「サラシア」に魅せられて」を取り上げる。


糖尿病、古代から人類を苦しめてきた

サラシアは、デチンムル科のサラシア属植物を基原に開発された機能性食品素材の一般名称として知られている。

このサラシア属植物はインドやスリランカ、タイやインドネシアなどの東南アジア、中国南部、ソロモン諸島、アフリカ、ブラジルなど世界各地に分布し、約200種類もの種があることもわかっている。

日本で健康食品や機能性食品の原料として利用されているものは、主にインドなどの南アジアのものか、タイや東南アジアのサラシア属植物である。

健康食品では「血糖値対策関連」の利用が多いサラシアだが、糖尿病は飽食の時代になって出てきた病気ではなく、実は古代から人類を苦しめてきた疾患の一つでもある。

その証拠に、古代エジプト時代の医学資料「エーベル・パピルス」にも糖尿病の記載が認められる。

また、インド伝統医学アーユルヴェーダの医学書「チャラカサンヒター」にも糖尿病に関する記載があり、特にアーユルヴェーダ医学では古代から現在まで糖尿病の治療にサラシア属植物が使用されている。

糖吸収抑制作用が確認

また、スリランカでは、サラシア属植物の太い根や茎をくり抜いて作られたコップが、毎日の食生活で用いられ、このコップに入れた水を飲むことで糖尿病の予防になると考えられている。

1927年に出版されたアーユルヴェーダの医学書「Materia Medica and Therapeutics of Indian Medicial Plants」には、「Saptrangi」という生薬が収載されており、この生薬を糖尿病に用いて非常に効果的であるとの記載がある。

現在、「Saptrangi」はサラシア属植物の根と茎であることがわかっていて、インドでは、糖尿病の他にもサラシア属植物から抽出される生薬(主に根や茎)には、「リウマチ・皮膚病・強壮・血液浄化・無月経や月経困難」といった症状にも効果を発揮することが知られている。

サラシアに関する様々な文献調査を行うと「抗糖尿病作用」があることが確認できるが、吉川氏らも、特にインド産やスリランカ産のサラシア属植物の根や幹に「α-glucosidase (アルファ-グルコシダーゼ)阻害作用」に基づく糖吸収抑制作用があることを見出し、活性成分として「neosalacinol」や「neokotalanol」を単離し、構造式を明らかにすることなどに成功しているという。

これらの活性成分にはα-glucosidase阻害活性による抗糖尿病薬「acarbose」と同等の阻害活性があることも判明し、さらに小腸の粘膜に存在し持続活性を示すことなどもわかっている。

さまざまな毒性試験で安全性が担保

サラシア属植物エキスはさまざまな毒性試験により安全性は十分担保されている。

中でも糖尿病の境界地にいる被験者に対する臨床試験や耐糖能が正常である被験者にも安全性が担保されているため、予防医療が重要とされる現代において重要な健康素材といえる。

しかし、サラシア属植物の市場品は、野生種が採取されて供給されているため、基源植物の同定が困難であったり、採取地や採取時期、加工調整法なども明確にされていないものが認められるのが問題点。

サラシア原料や抽出エキスの品質評価方法として、ポリフェノール含量やキサントン配糖体の含量の定量法や、α-glucosidase阻害活性を指標とした評価法を行なっているが十分とはいえない。

また、これらの指標から、有効成分の含有量が、同じサラシア属植物でも植物種と山地が違うと有効成分に顕著な差異が認められることもわかっている。

さらに、日本ではサラシア属植物が健康食品素材として利用され、また需要も増しているが、野生種の資源枯渇が起こらないよう、栽培研究も進める必要がある。

葉の部分に期待されるリウマチ改善効果

現在、サラシア属植物はα-glucosidase阻害活性成分の定量分析が可能になったことで品質評価、安全性の確認、臨床試験が可能となり、特定保健用食品(機能性表示成分はサラシア由来サラシノール)や機能性表示食品(機能性関与成分はネオコタラノール)として利用されている。

しかし、今後は葉の部分に期待されるリウマチ改善効果や、腸内細菌叢を変化させることで起こる免疫機能の向上効果などについてもその作用機序が明らかにされることが待たれている。そして、原料として安定供給できるよう、大量栽培の試みも着実に成果を挙げている、という。

ちなみに吉川氏が中心となっているサラシア属植物普及協会では、サラシア属植物の研究だけでなく、シンポジウムの開催、サラシア属抽出エキスに関する製品化、品質向上や規格基準の策定などにも力を入れていると報告した。


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