「腸管免疫」を刺激し、疾患を予防
〜「第3回 In vivo 実験医学シンポジウム」


2009年12月9日(水)、学士会館で、「第3回 In vivo 実験医学シンポジウム〜食品の機能性/安全性評価へのin vivo 実験医学の応用」が開催された。この中で、 上野川修一教授(日本大学生物資源科学部)が「食品と免疫」と題し、食品成分の「腸管免疫」に及ぼす影響について解説した。


腸内常在菌、「腸管免疫」に果たす役割

in vivo 実験医学とは、動物実験系を研究手段としてヒトにおける様々な事象、病的状態、病理発生機序、薬物作用とそのメカニズムなどを予測・解析するための基礎医学、あるいは生命科学の分野を指す。医薬品や医療機器の開発、疾患の診断、治療、予防の研究に実績を挙げている。

「食品と免疫」というテーマで、上野川修一教授(日本大学生物資源科学部)は「食品と免疫」について最新の研究成果を報告した。
全長7メートル、テニスコート1枚分に相当する腸内には100兆匹の常在菌が棲み、人体の免疫機能のおよそ60%を有する。そのため、「腸管免疫」といわれる。

食品は腸の恒常性に大きく影響し、日本人が世界的に長寿なのは、優れた食文化によるものとの見方もある。近年の「食」の欧米化や偏食は、腸内細菌のバランスを崩し、疾患リスクが高まると考えられている。

「ストレス、加齢、栄養不良」が免疫低下の原因

免疫機能低下の主な原因は、「ストレス、加齢、栄養不良」の3つ。SARSの罹患者をみると、24歳以下の死亡率は1%未満だが、65歳以上の死亡率は50%と高い。加齢による免疫低下で発症リスクが高まっている。
また、偏食やストレスも免疫低下を招き、感染症やアレルギー、がんなどの誘因となる。

免疫低下を防ぐにはどうすればいいのか。
現在、ヒトの臨床実験などを通じて、疾患リスクを低減させる食品成分があることが明らかになっている。

代表的なものでは、プロバイオティクスといわれる乳酸菌などの腸内有用菌、ビタミンA、C、E、亜鉛、セレンなどがあると上野川氏はいう。

腸内免疫、アレルギー発症と関連

上野川氏によると、アレルギーの幼児の腸内常在菌を調べたところ、ビフィズス菌などの有益菌が少なく、スタヒロコッカスなどの有害菌が多いことがわかったという。

腸内免疫系の異常が、アレルギーの発症リスクを増大させる。そのため、有益菌であるラクトバチルス菌を妊婦や乳児に経口投与したところ、アトピー性皮膚炎が半減したという報告もあるという。プロバイオティクスと花粉症との関係についても調査や実験が進められているという。

ビタミン・ミネラルの摂取で免疫活性が期待

また、ビタミンAは腸管免疫を刺激、ビタミンCは酸化ストレスを軽減、ビタミンDは自己免疫疾患を抑制、ビタミンEは体内の抗酸化と免疫の維持、亜鉛は酵素の構成物質として免疫を維持・獲得、などが認められているという。また、セレンも酸化ストレスを除去する酵素の構成成分として働くという。
これらのビタミン・ミネラルを摂ることで免疫が活性化し、感染症の予防が期待できると上野川氏は報告した。


Copyright(C)2009 JAFRA. All rights reserved.